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川の漁師

Fisherman of the river

長良川では1300年の歴史を誇る「鵜飼」をはじめ、「瀬張り網漁」「夜網漁」など、伝統の漁が受け継がれています。

漁協では、鮎の資源を守るため、遺伝的に配慮した人工種苗の放流を行っているほか、天然鮎の安定した遡上数の確保を目的としたふ化事業なども実施しています。また、川の漁師が鮎の資源を守り、漁場を保全する活動に取り組んでいます。

川とともに暮らす、長良川の川漁師

川で漁をする人々は、河川の清掃や鮎の産卵場など、漁業資源を守る活動も行っています。

全国で川漁師の数は減っています。長良川でも高齢化によって、専業漁師として生計をたてている川漁師は数えるほどしかいなくなりました。長良川の魚食文化を担い、川の自然環境を伝える後継者の育成が課題となっています。

長良川で獲る魚と鮎カレンダー

長良川で獲る魚と鮎カレンダー
長良川で獲る魚と鮎カレンダー

鮎の種付け
(受精卵の確保・輸送・飼育)

遡上する天然鮎を安定確保するため、岐阜市の漁場では川漁師による種付けの作業が毎年行われています。10月から11月の終わりにかけて、産卵場などのために下ってくる鮎から精子と卵子をしぼり受精させたのち、シュロ(ヤシ科の樹木)の樹皮に受精卵を付着させて、河口堰近くの水路に設置し飼育します。10日ほどでふ化した仔魚は、伊勢湾へと下り、春になると再び川に戻ってきます。

1匹で約5万個の卵を産む鮎。水路では約1億個の卵がふ化しますが、海へたどりつくのはこのうちのほんのわずかで、遡上してくるものは1%以下といわれています。

漁協が河口堰の近くで鮎の漁業資源を行うことによって、多くの仔魚が海に下ることができるよう助け、天然鮎の資源を守っているのです。

長良川の伝統漁法

鵜飼

鵜飼とは、長良川を代表する伝統的な川漁のひとつで、その光景の美しさから、観光として人気があります。

魚を丸呑みする習性のある水鳥の「鵜(う)」を紐で操り、船上で魚を吐き出させて鮎を捕えます。夜に寝ていた鮎は、かがり火の明るさと舟べりをたたく音に驚き、身をひるがえします。水中でキラリと光る鮎を、鵜が潜水して捕えるのです。

鵜飼で捕られた鮎の体には、鵜のくちばしの痕がついており「歯形の鮎」とも言われ特に珍重されます。鵜によって瞬時に命を奪われた鮎は、鮮度の状態が良く味も最高といわれています。

鵜飼は世界や日本国内の各地で行われていますが、その中でも、長良川(岐阜市と関市)の鵜飼は日本で唯一の御料鵜飼として皇室に保護されています。長良川の鵜匠には宮内庁式部職鵜匠という役職が与えられています。かつては信長や芭蕉、チャップリンなどの武将や文化人に愛され、昔から時の権力者の保護を受けながら今日まで継承されてきました。

瀬張り網漁

白い布やビニールを川底に敷き、川面に張ったロープが水の流れでたてる音によって、秋に産卵場に向かう鮎を驚かせ、停滞したところを投網で捕まえる漁法です。10月頃から産卵期の落ち鮎を狙います。漁師の言葉で、しかけのことを「ソジ」「まわり」「おどし」とも呼びます。秋の長良川の風物詩です。

夜網漁

長良川上流の郡上市美並町や中流の美濃市で行われています。夜の川に網を張り、舟上のかがり火の明るさと、櫂(かい)を使い舟べりや川面をたたく音で鮎を網へ追い立てる、昔ながらの漁法です。

登り落ち漁

春から秋にかけ、上流から下流までに見られる漁法です。アジメドジョウやカジカなど川の底をはう習性のある魚を捕えます。川の瀬を板で仕切り、遡上する魚を誘導します。仕掛けた樋(とい)に落ちた魚は、受け箱に流され捕獲されます。

登り筌(うえ)

春から秋にかけ、中・下流域で昔から行われている漁法です。浅瀬の河岸近くに、下流に向かって漏斗(ろうと)状に石を積み上げ、その狭まったところに筌と呼ばれる筒状の網を置きます。川底を溯上するヨシノボリなどを石積みにそって誘導し、筌で捕えます。筌を使った漁は、地域や魚種によって、さまざまな漁具や仕掛けがあります。

梁(やな)漁

上流域で落ち鮎を捕獲する漁法です。大きな仕掛けで漁獲量も多く、古くから行われています。川の流れを制御して落ち鮎を誘導し、台木の上に竹の簀(す)を張り、鮎を捕えます。近年は、観光やなとして鮎のつかみ取りなどのやな漁体験が観光客から人気があります。

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