「次世代へ繋ぐ農業遺産~伝統的な農林漁業と文化~」をテーマに
岐阜県で「第8回東アジア農業遺産学会」開催
日中韓3国の有識者が集い、世界農業遺産発展寄与を目的に学術的交流
そして、岐阜県内の世界農業遺産「清流長良川の鮎(長良川システム)」の価値を発信
8月8日(木)「第8回東アジア農業遺産学会」が岐阜県にて開催されました。
分科会では、次世代によるユースセッションも
当日は、開会式、そして県を代表する伝統的な盆踊り“郡上踊り”の披露に続き、FAO、3か国による基調講演。分科会に分かれてのセッション、基調発表。また、長良川システムの一端をになう長良川鵜飼の観覧を含めた交流会が実施されました。分科会は、農業遺産を活用した農山漁村の活性化、農業遺産における伝統文化の保全や生態系の保全など、9つのテーマで実施され、高校生・大学生等によるユースセッション等、未来をになう次世代教育も視野に入れた内容となりました。
翌8月9日(金)には、エクスカーションを実施
学会翌日の9日(金)には、長良川システムへの理解を深めていただくため、エクスカーションを実施しました。4コースにわかれ、清流長良川あゆパーク、岐阜県魚苗センター、鵜飼観覧船造船所、長良川うかいミュージアム、刃物屋三秀 関刃物ミュージアム、美濃和紙の里会館などの関連施設や、岐阜市内での鵜飼の里歩きや郡上市八幡町での清流長良川から生まれた「水舟」「郡上本染め」「鮎の友釣り」を視察しました。
- 開催日程
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令和6年8月8日(木) 学会/9:00~17:00
鵜飼観覧/18:45~21:00
※8月9日(金) 現地視察
- 会場
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岐阜県庁1階ミナモホール、1階ホワイエ、3階会議室、20階会議室
(岐阜県岐阜市薮田南2-1−1)
鵜飼観覧:長良川河畔、岐阜市鵜飼観覧事務所(岐阜市湊町1-2)
現地視察:長良川流域4市(岐阜市、関市、美濃市、郡上市)
- 主催
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東アジア農業遺産学会、岐阜県、世界農業遺産「清流長良川の鮎」推進協議会
- 後援
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農林水産省
- テーマ
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次世代へ繋ぐ農業遺産 ~伝統的な農林漁業と文化~
- 目的
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・地域の課題やそれらに対応するための研究成果などを共有することにより、日中韓の学術連携による世界農業遺産の発展への寄与
・世界農業遺産「清流長良川の鮎」(長良川システム)の価値を国内外へ発信するとともに、日中韓における認定地域及び国連食糧農業機関(FAO)との連携強化
- 問合せ
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岐阜県 農政部 里川・水産振興課 里川振興係
TEL:058-272-8455
FAX:058-278-2695Email:c11428@pref.gifu.lg.jp
プログラム
8月8日(木) 学会(場所:岐阜県庁(1階ミナモホール、1階ホワイエ、3階会議室、20階会議室))+
オープニングアトラクション(郡上踊り)
開会式
1階ミナモホール
開会挨拶
東アジア農業遺産学会代表議長 中村 浩二 NAKAMURA Koji
岐阜県知事 古田 肇 FURUTA Hajime
来賓挨拶
FAO駐日連絡事務所長 日比 絵里子 HIBI Eriko
農林水産省大臣官房審議官 山本 泰司 YAMAMOTO Yasushi
基調講演
1階ミナモホール
今後のGIAHSプログラム運営上の課題と問題点
GIAHSのアプローチは農村開発をどのように促進するか
GIAHSによる持続可能な開発
GIAHSサイトからの農産物に付加価値をつける道筋
韓国におけるNIAHSの保全・管理のための3つの政策
研究者及び認定地域ポスターセッション
1階ホワイエ
※研究者及び各認定地域の取組をポスター展示
※日本
No.1 清流長良川の鮎
No.2 GIAHS 清流長良川の鮎
No.3 みなべ・田辺の梅システム「循環」
No.4 能登の里山里海
No.5 峡東地域の扇状地に適応した果樹農業システム
No.6 世界農業遺産-兵庫美方地域『人と牛が共生する美方地域の伝統的但馬牛飼育システム』
No.7 「雪の恵みを活かした稲作・養鯉システム」
No.8 長良川システムにおける気候温暖化がアユの生活史に与える影響
No.9 琵琶湖システム
No.10 阿蘇の農業と地下水資源 - 災害時における天然水資源の重要性
No.11 トキと人が生きる郷のネクストステップ
No.12 『持続可能な水田農業を支える「大崎耕土」の伝統的水管理システム』
No.13 歴史と伝統がつなぐ山形の最上紅花 ~日本で唯一、世界でも稀有な紅花生産・染色用加工システム~
No.14 地域住民による意図しない農業遺産保全の実践:「にし阿波の傾斜地農耕システム」認定地域における雑穀組合の活動を事例に
No.15 国東半島宇佐地域世界農業遺産
No.16 大都市武蔵野台地における落ち葉堆肥アグロフォレストリーシステム
No.17 高品質茶の生産に不可欠な「茶草場」の生物多様性と伝統農法の共存
No.18 「静岡水わさびの伝統栽培」について
No.19 「有田・下津地域の石積階段園みかんシステム」
※中国
No.20 "Daughters of Fish and Mulberry"「魚と桑の娘たち 」による農業文化遺産継承の道
No.21 浙江省湖州市における桑堤と養魚池システムの特徴と様式
No.22 徳清淡水真珠貝複合漁業システム(1)
No.23 徳清淡水真珠貝複合漁業システム (2)
No.24 福建省福鼎白茶の栽培システム
No.25 福州市のジャスミンと茶の栽培システム
No.26 福州ジャスミン茶栽培技術
No.27 中国浙江省におけるGIAHS青源森林とキノコの共培養システム
No.28 清遠県における菌類資源の「一地域、一博物館、五銀行」保全システムの構築
No.29 農業遺産システム 「碧螺春茶果複合システム 」における産業融合の実践と理論的探求
No.30 浙江省の棚田から世界へ グローバル農業文化交流・相互学習会議
No.31 米から共通の繁栄へ
No.32 郡部経済の発展を促進する農業遺産システムの特定に関する研究
No.33 山東省楽陵市ナツメ林複雑系の保護と発展
No.34 山東省楽陵市ナツメ林複雑系の特徴と様式
※韓国
No.35 韓国におけるKIAHS、KIFHS、GIAHSの進展
No.36 潭陽市の竹におけるてんぐ巣病の発生パターンとアシクロスポリウム菌検出法の開発
※日本
No.37 長良川鵜飼
No.38 郡上本染鯉のぼり 「寒ざらし」
No.39 郡上鮎・友釣り
No.40 和紙とうだつ
No.41 小瀬鵜飼いへようこそ
No.42 日本の農業遺産システム
No.43 岐阜県水産研究所の国際貢献の取り組み
No.44 岐阜県水産研究所の国際貢献の成果
No.45 天然のアユ集団を保全する取り組み
No.46 魚苗センターにおける遺伝的多様性を保持する取り組み
休憩(3階会議室)
分科会①
1階ミナモホール、20階会議室(2会場)
テーマ1:高校生・大学生等によるユースセッション(同時通訳)
岐阜のオオサンショウウオを守る─生息地の地質学的要因分析
伝統野菜「マクワウリ」の養殖アユへの飼料利用に関する研究
義城(ウィソン)における伝統的灌漑農法の灌漑施設の特徴
世界農業遺産(GIAHS)の保護と継承における女性の役割と社会的価値
─無形文化遺産研究所における安渓鉄観音女性茶師の実践と研究の事例
テーマ2:農林水産業の後継者の確保・育成・定着(英語)
K-M GBF 2030の達成に向けたKIHASのOECM指定に関する研究
農村活性化のための農業遺産活用における女性の役割強化: 中国における3つの事例に基づく研究
生物圏保護区システムとの比較分析を通じたKIAHSの運営管理強化戦略
中国NIAHSにおける人的資源の合理化:茶観光統合の役割に関する考察
テーマ3:伝統的な漁業の保全(英語)
社会生態系としてのGIAHS「清流長良川の鮎」に関する教育プログラムの開発
徳清県の淡水真珠貝複合漁業システムの分析、保護、発展探査
韓国・巨済島(コジェド)のヒラメ漁における伝統的揚網の遺産的価値
世界農業遺産「清流長良川の鮎」への地球温暖化の影響と適応策~自治体・研究者・漁業者の共同モニタリングにより~
昼食(鮎のおもてなしオリジナル弁当)
分科会②
1階ミナモホール、20階会議室(2会場)
テーマ4:農業遺産を活用した農山漁村の活性化(同時通訳)
「能登の里山里海」復興の取組み
福鼎白茶(ふくてい・はくちゃ)文化システムの概要と行動計画
農村の活性化を促進する農業文化遺産の価値転換に関する簡単な分析
: 農業・文化・観光の一体化の例として湖州市の桑堤と養魚池の保護を取り上げる
済州島石垣農業システム
世界農業遺産「清流長良川の鮎」の保全・活用・継承に向けた取組み
テーマ5:農業遺産ツーリズム(英語)
メディアから見た世界農業遺産の独自性
竹林管理による国東GIAHSの景観と生物多様性の保全
「観察体験」は、農業遺産とその生態系を健全に保全するための鍵である
GIAHSサイトにおける農村観光の影響:生計-生産-生態系のネクサスの観点から
棚田と茶農業文化遺産に対する観光イメージの差異に関する研究
テーマ6:農業遺産を活用した景観保護(英語)
韓国の農業遺産景観の現代的変容に関する2つの考察
高千穂郷・椎葉山地区における農業労働力の確保と
持続可能な農業システムの推進に向けた政府の取り組み
SDGs未来都市構想によるみなべ町の持続可能な地域づくりの推進
農業遺産と国立公園管理との相乗効果を理解する
山の棚田景観文化遺産が自然と人間に寄与すること
分科会③
1階ミナモホール、20階会議室(2会場)
テーマ7:農業遺産による農産物のブランド化(同時通訳)
大崎耕土におけるネイチャー・ポジティブ(自然再興)の実現と農産物のブランディングへの取り組み
クラウドファンディングを活用した青山島(チョンサンド)グドゥルジャン灌漑棚田オーナーシステムの運営結果
世界農業遺産を通じて福州ジャスミン茶のブランド構築を促進する道筋
徳島県つるぎ町、藍栽培による家賀斜面集落活性化プロジェクト
デジタル化を踏まえたGIAHSブランド資産の形成とその影響要因に関する実証研究
テーマ8:農業遺産における伝統文化の保全(英語)
土地利用の変化と農業所得の特徴分析に関する研究:クレのサンスユ農業を対象に
農業遺産保全活動への参加に影響を与える要因-義城(ウィソン)伝統灌漑農業システムの事例研究
生態学的持続可能性のためのマルチステークホルダー協働評価ツールの構築:佐渡リビングラボの実験的研究
農業文化遺産の保護を通じて農村の活性化に寄与する仕組みと道筋
デジタル技術、新しい農民、そして中国と日本におけるGIAHS文化保存の未来
テーマ9:農業遺産における生態系の保全(英語)
農業遺産システムのダイナミックなモザイク景観における植物多様性: みなべ・田辺の梅システム
農業遺産における生態学的指標種の選定フレームワークの設計
中国GIAHSサイトにおける農業生物多様性保全の成功事例
伝統的システムの保護: 農業生物多様性に基づく農業遺産地域の特定
農業遺産における生態系サービスを評価する枠組みの開発
移動
閉会式
1階ミナモホール
次期開催国(韓国)挨拶
閉会挨拶
世界農業遺産「清流長良川の鮎」推進協議会長
玉田 和浩
TAMADA
Kazuhiro
交流会(鵜飼観覧)
8月9日(金) 現地視察等+
エクスカーション(全4コース)
・中国(1コース)
岐阜県魚苗センター→清流長良川あゆパーク→郡上市八幡町視察(水舟、郡上本染め等)→天然鮎料理ヤナ場
みやちか(ヤナ漁見学等)
・韓国(1コース)
清流長良川あゆパーク→郡上市八幡町視察(水舟、郡上本染め等)→岐阜県魚苗センター→天然鮎料理ヤナ場
みやちか(ヤナ漁見学等)
・日本(2コース)
①岐阜市鵜飼観覧船造船所→長良川うかいミュージアム・鵜飼の里歩き→郡上市八幡町視察(水舟、郡上本染め等)→清流長良川あゆパーク
②刃物屋三秀関刃物ミュージアム→美濃和紙の里会館→郡上市八幡町視察(水舟、郡上本染め等)→清流長良川あゆパーク
視察各所の紹介
清流長良川あゆパーク
世界農業遺産「清流長良川の鮎」の情報発信拠点である「清流長良川あゆパーク」の施設概要やこれまでの活動実績・効果を学ぶとともに、長良川の伝統的鮎漁である「友釣り」、「投網」を体験します。
- 鮎の友釣り、投網体験
- 長良川システムを学ぶ(多面シアター)
- 清流長良川あゆパークの概要説明
鵜飼観覧船造船所
1300年以上の歴史ある伝統漁法「長良川の鵜飼」において、鵜匠が実際に使用 する鵜舟の歴史や伝統的な和船である鵜飼観覧船の建造について学びます。
- 鵜飼観覧船造船所の解説と視察
長良川うかいミュージアム・鵜飼の里歩き
「長良川の鵜飼」の歴史や技術、特徴について学ぶとともに、実際の鵜匠宅や鵜を飼育する鳥屋を視察します。
- 長良川うかいミュージアムの視察
- 鵜匠の家、鳥屋を視察
岐阜県魚苗センター
世界農業遺産「清流長良川の鮎」のシンボルである鮎の資源量の維持、増大のため、放流鮎種苗を遺伝的多様性維持を意識し天然親魚から生産する「(一財)岐阜県魚苗センター」の施設概要、生産状況について学ぶともに、実際に生産する施設見学を行います。
- 養殖池と鮎の視察
- 岐阜県魚苗センターの取組み説明
美濃和紙の里会館
1300 年以上の歴史ある「美濃和紙」の紙漉き体験を行い、その歴史や紙漉きに使う道具、製造工程等について学びます。美濃和紙の中で最高級の手漉き和紙「本美濃紙」の技術は、ユネスコ無形文化遺産にも登録されています。
- 美濃和紙についての解説・視察
- 手漉き和紙の製作体験
刃物屋三秀 関刃物ミュージアム
鍛冶に必要な良質な水が長良川から豊富に得られたことから発展した、世界三大刃物産地でもある関市の刃物。その関市の刃物の歴史や日本刀の製造工程等について学びます。また、関の刀の切れ味を居合切りの実演により、体感します。
- 関の刃物についての解説・視察
- 居合切りの実演
郡上市八幡町
清流長良川の水を活かす生活文化である「水舟」、清流に育まれた伝統工芸の「郡上本染め」、「鮎の友釣り」を視察します。
昼食は、郡上の郷土料理である「鶏ちゃん」を味わいます。
- 水舟、郡上本染め、鮎の友釣りを視察
- 郷土料理の昼食(鶏ちゃん定食)
天然鮎料理ヤナ場 みやちか
世界農業遺産「清流長良川の鮎」のシンボルである鮎の伝統的な漁法「ヤナ漁」について学ぶとともに、天然鮎を用いた伝統料理や創作料理の試食や説明により岐阜県の奥深い鮎の食文化を体感します。
- ヤナ場の視察
- 天然鮎料理の試食
作業会合 ※次期開催国の実施内容打合せ
<東アジア農業遺産学会>について
略称<ERAHS>:East Asia Research Association for Agricultural Heritage Systems
世界農業遺産の発展に寄与することを目的に、日本、中国、韓国の3か国の世界農業遺産地域で構成される学会であり、平成25年に設立、今回で8回目の開催となる。国内では3回目、岐阜県では初開催となります。
世界農業遺産とは
世界農業遺産 略称<GIAHS>:Globally Important Agricultural Heritage Systems
世界農業遺産は、社会や環境にあわせ、世代を越えて受け継がれた伝統的な農林水産業、そこから生まれる独自の文化や景観、それらと関わる生物の多様性などを含め、世界的に重要と認められた地域を国際連合食糧農業機関(FAO)が認定します。現在の認定地域は、世界で26ヶ国86地域、日本では15地域(R5年11/10時点)▷ 国内の主な世界農業遺産認定地※出展:農林水産省HP
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琵琶湖システム/石川県
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能登の里山里海/滋賀県